海外のブログやSNSで店を紹介してもらったあと、「結局、効果はあったのか」がわからない。インバウンド集客に取り組む飲食店の方から、よく聞くお悩みです。
結論を先に書くと、効果測定は一つの数字で判断するものではありません。投稿がどれだけ届いたか、店がどれだけ調べられたか、実際に何人来たかの三段に分けて見ると、どこまでうまくいき、どこで止まっているかが見えてきます。
本記事では、観光庁の手引書と、Google・Metaが公開している指標の定義をもとに、飲食店が見るべき数字と月次レポートの読み方を整理します。
最初に「成果の数字」と「途中の数字」を分けます
観光庁は、観光地域づくり法人(DMO、地域の観光を運営する組織)向けに、成果の測り方をまとめた手引書を出しています。そこでは、最終的な目標を示す指標(KGI)として旅行消費額を置いています。その下に、目標につながる途中の指標(KPI)を木の枝のように並べる「KPIツリー」という考え方が示されています(出典: 観光庁「観光地域づくり法人(DMO)によるKGI・KPI計測に係る手引書 ver1.0」)。
同じ手引書では、途中の指標の例として、運営するサイトのアクセス数、SNSでの高評価投稿の割合、リピーター率、再来訪意向などが挙がっています。
この考え方は、一軒の飲食店にもそのまま使えます。成果の数字は「訪日客の来店数」、途中の数字は「投稿の閲覧」や「店の検索」です。途中の数字だけが伸びても成果とは言えませんが、途中の数字を見なければ、来店が増えない理由も探せません。
見る数字は「届いた・調べた・来た」の三段です
訪日客が店に来るまでには、おおむね次の三段があります。
- 届いた……ブログやSNSの投稿が、その国の人の目に触れた
- 調べた……投稿を見た人が、地図アプリなどで店の場所や営業時間を確かめた
- 来た……実際に来店した
一段目の数字は投稿の側、二段目は店の地図情報の側、三段目は店の中にあります。数字を見る場所が段ごとに違うため、一か所だけ見ていても全体はわかりません。
三段をそろえて見ると、判断がしやすくなります。投稿はよく読まれているのに調べられていないなら、店の情報にたどり着きにくい可能性があります。調べられているのに来店が少ないなら、営業時間や予約のしやすさなど、店の側に原因があるかもしれません。
一段目:投稿の数字は「リーチ」と「保存」に注目します
Instagramの場合、プロアカウントの投稿にはインサイト(投稿の分析数値)が付いています。Metaの開発者向け資料では、主な指標を次のように定義しています(出典: Meta for Developers「Instagram Media Insights」)。
- リーチ……投稿を少なくとも1回見たユーザーの人数
- 保存……投稿が保存された回数
- シェア……投稿が共有された回数
- プロフィールへのアクセス……プロフィールが訪問された回数
飲食店が特に見たいのは保存です。旅行の計画を立てる人は、行きたい店の投稿を保存して、あとで見返す使い方をよくします。リーチが「どれだけ届いたか」を示すのに対し、保存は「行き先の候補に入ったか」に近い数字だと考えられます。
これらの数字は投稿した本人の画面でしか見られないことが多いため、ブロガーやインフルエンサーに依頼するときは、あらかじめ数字の共有をお願いしておくと確認がスムーズです。
二段目:店が調べられたかはGoogleビジネスプロフィールで見ます
投稿を見た人の多くは、地図アプリで店を確かめます。Googleビジネスプロフィールは、Googleマップに載る店の情報です。オーナー確認を済ませた店に限り、パフォーマンスという画面で次のような数字を確認できます(出典: Google ビジネス プロフィール ヘルプ「ビジネス プロフィールのパフォーマンスとインサイトを確認する」)。
- 閲覧数……Google検索とGoogleマップでプロフィールを閲覧したユーザーの数
- ルート……店までのルートを検索したユーザーの数
- 通話数……通話ボタンがクリックされた回数
- ウェブサイトのクリック……プロフィールに表示されたウェブサイトへのリンクのクリック数
- メニュー……メニュー写真やメニューのリンクなどへのクリック数
- 検索……店が表示されたときに使われた検索語句
来店に最も近いのはルートです。「行き方を調べた」人は、実際に向かう直前の人だと考えられるからです。
読み方の注意もあります。同じヘルプによると、閲覧数は同じ人が同じ日に何度見ても1回と数えられ、検索の数字は毎月月初に更新され、表示まで5日ほどかかることがあります。月初に見ると先月分がまだ出ていない場合があるので、確認は月の前半の終わりごろが安心です。
三段目:来店の数字は、店の中でしか取れません
最も大事な来店の数字は、どのアプリにも自動では出てきません。店の側で記録する必要があります。負担の少ない方法としては、次のようなものがあります。
- 国・地域別の来店組数を記録する……伝票やレジのメモに国を一言書いておくだけでも、月ごとの変化がわかります
- 予約の経路を記録する……予約サイト、電話、飛び込みのどれで来たかを残します
- 「何で知りましたか」と聞く……翻訳アプリや指差しの紙で、ブログ、Instagram、地図などの選択肢から選んでもらいます
観光庁の手引書では、来訪者満足度を、5段階評価のうち「大変満足」「やや満足」を合わせた割合と定義しています。リピーター率や再来訪意向も、同じアンケートであわせて聞くのが効率的だとしています。店でアンケートを取る場合も、この形に合わせておくと、月ごとに比べやすくなります。
月次レポートは「国別」「前月比」「時間差」で読みます
三段の数字を月に一度並べるときは、次の三点を意識すると読み違えが減ります。
- 国別に分ける……韓国と台湾では、見ている媒体が違います。観光庁の2025年の調査では、出発前に役に立った情報源として、韓国は個人のブログが42.9%と、全体の23.9%を大きく上回っていました(出典: 観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年年次報告書」)。国をまぜて集計すると、どの施策が効いたのかが見えなくなります
- 前月と前年同月を並べる……訪日客の数は季節で大きく動きます。前月だけと比べると、季節の波を施策の効果と取り違えることがあります
- 時間差を見込む……旅行は出発の前から計画されるため、投稿を見た人がすぐ来店するとは限りません。投稿の翌月に来店が増えなくても、2〜3か月は様子を見るのが現実的です
数字を見るときに気をつけたいこと
最後に、よくある読み違いを三つ挙げます。
一つ目は、閲覧数だけで判断してしまうことです。閲覧数が伸びても、保存やルート検索が伸びていなければ、来店につながる関心までは届いていない可能性があります。
二つ目は、増えた来店をすべて一つの施策の効果だと考えることです。同じ時期に航空便の増便や大型連休が重なることもあります。「何で知りましたか」の聞き取りは、こうした取り違えを防ぐ手がかりになります。
三つ目は、数字を見ないまま施策を続けることです。三段のどこで止まっているかがわかれば、次に手を入れる場所もはっきりします。
RED BOOSTでは、NAVERブログ、台湾・香港のInstagram、RED、大衆点評での来店型PRを、数十店舗の飲食店と進めてきました。まずは今月から、国別の来店組数を記録するところから始めてみてください。
この記事は、飲食店のインバウンド集客を支援する
RED BOOST が、公的統計や公式資料をもとにまとめたものです。数字は「参考・出典」のリンク先で確認できます。
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