中国からのお客様を増やしたい飲食店にとって、最初の関門は「知ってもらうこと」です。中国本土ではGoogle・Instagramが原則として使えないため、日本国内向けの施策をいくら磨いても、中国のお客様の視界には入りません。
その中国で、旅先の店を探す入口になっているのが小紅書(シャオホンシュー/RED)です。観光庁の調査でも、中国の旅行者が出発前に役に立ったと答えた情報源はSNSが49.4%で1位、口コミサイトは6.4%にとどまります(出典: 観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年 年次報告書」)。REDがどういう場なのか、飲食店はどう関わればよいのか。来店直前に見られる大衆点評との違いとあわせて整理します。
小紅書(RED)とは——「眺める」より「調べる」に使われるSNS
小紅書(RED)は、中国最大級の発見・口コミSNSです。写真や短い動画に体験の感想を添えた投稿が並び、利用者はそれを見て買う物や行く店を決めます。2025年以降は国際的な名称として「rednote」も使われます。
日本で広く使われるSNSと最も違うのは、「眺める」より「調べる」に使われているところです。中国の利用者は、地名や料理名をREDの検索窓に入れ、実際に訪れた人の投稿を読んで判断します。店を訪ねて紹介する投稿は「探店(タンディエン=店めぐり、の意)」と呼ばれます。
観光分野での存在感は、公的機関の動きにも表れている
日本政府観光局(JNTO)は中国市場向けの発信先として、簡体中文のウェブサイトに加えて微博(ウェイボー)・WeChat(微信)とならぶ形でREDを挙げています(出典: JNTO「ウェブサイトやSNSを通じた訪日観光情報の提供」)。香港観光局も小紅書と連携し、2023年の香港観光に関する投稿は1万件を超え、合計再生回数は3億回に達したと報じられました。同記事はREDを「2億人以上のアクティブユーザーを有し、うち7割以上は1990年代生まれの若者だ」と紹介しています(出典: ジェトロ・ビジネス短信(2024年4月22日))。
数字で見る——中国のお客様は、出発前にSNSで店を探している
ここからは、観光庁の公的調査で確認できる数字を見ていきます。以下はすべてインバウンド消費動向調査の2025年年次報告書によります(出典: 観光庁「訪日外国人の消費動向」(PDF))。
市場としての中国は、いま伸びている
- 2025年の中国からの訪日旅行者数は8,005,441人(前年比31.0%増)
- 旅行消費額は国籍・地域別で最も多く、構成比21.0%を占める
- 中国の一般客の平均泊数は9.1泊、来訪目的は「観光・レジャー」が86.9%
泊数が長いぶん、食事の機会も多くなります。同調査で、中国の旅行者が日本滞在中に役に立ったと答えた情報の2位は「飲食店」(56.8%)です。
そして、店を選ぶ入口はSNSに寄っている
「出発前に役に立った旅行情報源」への中国の旅行者の答えは、次の順でした。
- SNS(Facebook/X/微信等)……49.4%
- 動画サイト(YouTube/愛奇芸等)……24.4%
- 自国の親族・知人……15.0%
- 個人のブログ……14.8%
- その他インターネット……14.0%
一方で「口コミサイト(トリップアドバイザー等)」は6.4%で10位にとどまります。全国籍・地域の平均でもSNSが43.3%で最多、口コミサイトは11.0%です。行き先が決まる前の段階で候補に入るには、口コミサイトを整えるだけでは足りません。旅の計画を立てている人が眺めている場所に、店の情報が置かれている必要があります。
REDと大衆点評は役割が違う——「見つける」場所と「確かめる」場所
中国向けの施策では、REDと大衆点評がよく並べて語られます。ただし2つは競合ではなく、お客様の行動段階が違うだけです。
- RED=見つける場所。まだ行き先が固まっていない人が「大阪 寿司」のように検索し、他人の体験投稿から候補を拾う段階で開かれます。
- 大衆点評=確かめる場所。気になっている店の住所・営業時間・評価を確認し、行くかどうかを決める段階で開かれます。
この2つが噛み合っていないと、機会は途中で途切れます。REDで店を知ったお客様が大衆点評で調べても情報が出てこなければ、そこで検討は止まります。逆に大衆点評のページを整えても、REDで存在を知られていなければ、そもそも検索してもらえません。
見つけてもらうのがRED、確かめてもらうのが大衆点評——この順序で考えると、どちらから手を付けるかも見えてきます。大衆点評側の実務は大衆点評の店舗登録方法|無料版の手順と3つの壁で詳しく扱っています。
飲食店がREDと関わる3つの方法
「REDをやる」と一口に言っても、実際には性質の異なる3つの方法があります。
1. 自店のアカウントで発信する
企業や店舗が公式に運用するのが、プロアカウント(专业号=プロ向けの認証アカウント、の意)です。認証の申請条件は3点とされています。法人であること、有効な登記事項証明書を保有していること、確認可能な公式連絡先があることです。審査期間は通常1〜3営業日と説明されています(出典:China AD「小紅書(RED)企業公式アカウント認証の申請方法と必要書類」(2026年1月20日更新))。
弱点もはっきりしています。店が自分で語る言葉は、訪れた人の感想ほど強く働きません。投稿を続ける体力も要ります。
2. 訪れた人の投稿が生まれる状態をつくる
REDで実際に読まれているのは、利用者が自分の体験として書いた投稿です。第三者の視点で書かれた投稿が積み上がることが、検索されたときに見つかる条件です。現地のクリエイターに来店してもらい、体験として紹介してもらう「来店型PR」がここに当たります。書き手がすでに中国語圏の読者を持っているため、店側が中国語を書けなくても、投稿は現地の言葉と感覚で残ります。
3. 見つけた人の受け皿を整える
3つ目は、REDで店を知った人が次に開く場所の整備です。大衆点評の店舗ページ、地図上の位置、営業時間の正確さがここに含まれます。ここが空白だと、前の2つの努力が来店につながりません。
REDで見つけてもらうために、店側でできる準備
簡体字で書かれているか
中国本土は簡体字、台湾・香港は繁体字と、使う文字が異なります。繁体字の資料をそのまま流用すると、中国本土のお客様には読みにくい表記が入り込みます。店名・住所・主要メニューの簡体字表記を決めておくと、投稿する人にとっても書きやすくなります。
写真で「行き方」まで伝わるか
料理の写真は当然として、見落とされやすいのが外観と入口です。路地裏や雑居ビルの上層階にある店ほど、たどり着けずに諦められます。看板・入口・エレベーター前の写真は、店側で用意しておく価値があります。
予約と席の条件が先にわかるか
カウンターのみ、コースのみ、来店時間の指定といった条件は、旅行者にとって行けるかどうかを左右します。先に伝えておけば、条件が合わないお客様の失望を防げます。到着後に説明する形にすると、投稿にはその場の戸惑いがそのまま書かれます。
注意点——広告であることを隠さない
クリエイターに投稿を依頼する場合は、法令上の注意点があります。いわゆるステルスマーケティング規制です。景品表示法の指定告示として、令和5年10月1日に施行されました。対象は「広告であって、一般消費者が広告であることを分からないもの」です(出典: 消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります」)。
押さえるべき点は2つです。事業者が依頼・指示した投稿が第三者の純粋な感想に見える状態は、規制の対象になります。そして規制を受けるのは依頼した事業者側であり、投稿するインフルエンサー等ではありません。つまり店側が「PR表記は付けないでほしい」と求めるのは、自らを危うくする依頼です。
もう一つ、心構えの話をします。他人が書いた投稿は、店の持ち物ではありません。内容を思い通りにはできず、書いてほしくない一面が写ることもあります。だからこそ体験そのものを整えることが、遠回りに見えていちばん確実な方法です。
まとめ:REDは「見つけてもらう」ための場所
本記事の要点を整理します。
- 小紅書(RED)は中国最大級の発見・口コミSNSで、「眺める」より「調べる」に使われる
- 2025年の中国からの訪日旅行者数は8,005,441人(前年比31.0%増)で、旅行消費額は国籍・地域別で最多
- 中国の旅行者が出発前に役に立ったと答えた情報源はSNSが49.4%で1位、口コミサイトは6.4%で10位
- REDは見つけてもらう場所、大衆点評は確かめてもらう場所。役割が違う
- 関わり方は「自店発信」「訪れた人の投稿」「受け皿の整備」の3つ
- 依頼した投稿は、広告だとわかる形で出す(ステルスマーケティング規制)
中国のお客様が旅の計画を立てている時間は、店の営業時間の外にあります。その時間に働いてくれるのは、すでに投稿された誰かの体験です。投稿は蓄積型の資産で、需要が動いたときに「調べたら自店が出てくる」状態をつくります。
RED BOOSTは数十店舗の飲食店のインバウンド集客をお手伝いしています。中国市場では、中国語圏クリエイターの来店型PRと、大衆点評の登録代行・口コミ返信代行を行っています(RED(小紅書)インフルエンサー来店PRの詳細はこちら)。