中国からのお客様を迎えたい飲食店にとって、大衆点評(ダージョンディエンピン)への店舗掲載は避けて通れないテーマです。中国本土ではGoogle・Instagramが原則として使えないため、日本国内向けの施策だけでは中国のお客様の視界に入りません。
ネット上には「無料で登録できます」という説明が並びますが、いざ日本の飲食店が自力でやろうとすると、途中でつまずくポイントがいくつもあります。この記事では、公的機関が公開している無料版の登録マニュアルに沿って手順を追いながら、実務で問題になりやすい3つの壁と公式認証店舗との違いを整理します。大衆点評そのものの役割は大衆点評とは?飲食店の中国人集客に必須な理由をご覧ください。
大衆点評への掲載には、2つのルートがある
日本の飲食店が大衆点評に載る道筋は、大きく2つに分かれます。
- 無料版の店舗登録:アプリから自分で申請するルート。会員登録・店舗登録ともに無料の範囲で行えます(出典: 訪日ラボ「大衆点評の登録方法は?」)。
- 公式認証店舗としての登録:運営元の代理店経由で申し込む有料のルート。店舗側がページを管理できる状態になります。
この2つは「同じページの有料版・無料版」という関係ではありません。掲載できる情報量も、店舗側が使える機能も大きく異なります(出典: JC Connect株式会社(美団点評の日本総代理店)「大衆点評 よくあるご質問」)。まずは無料版でできる範囲を正確に知り、そのうえで自店に必要な形を選ぶのが確実です。
前提:自店のページは、すでに存在しているかもしれない
手順に入る前に、必ず確認していただきたいことがあります。自店のページが、店側の知らないうちにすでに作られている可能性です。
大衆点評では、訪日・在日の中国人利用者によって店舗ページが自動的に登録されるケースが多くあります。その場合、店舗側から情報の追加・修正を行うには公式認証店舗の登録サービスに申し込む必要があります(出典: JC Connect株式会社「大衆点評 よくあるご質問」)。
「まだ載っていないはず」という前提で新規登録を進めると、二重登録になったり、既存ページの誤情報が放置されたままになったりします。店名の表記ゆれ、古い営業時間、旧店舗の住所が残っているケースは珍しくありません。最初にやるべきは申請ではなく、自店の名前で検索してどんなページが存在しているかを見る現状確認です。
無料版の登録手順——全体は4つのステップ
ここからは無料版の手順です。岩手県が「いわてインバウンド受入態勢整備業務」の一環として公開している大衆点評(無料版)登録マニュアルに沿って整理します(出典: 岩手県「情報発信サポートツール(新規登録マニュアル・研修動画)」/大衆点評(無料版)登録マニュアル(PDF))。
同マニュアルは、登録の流れを次の4ステップとして示しています。
- 個人アカウントを取得する
- 一般利用者として、大衆点評側に施設の登録を依頼する
- 大衆点評側が確認し、地点として登録される
- 地点登録された後に、店舗情報を入力する
注目していただきたいのがステップ2です。店舗オーナーとして登録するのではなく、「一般利用者として登録を依頼する」形から始まります。この構造が、後述する「壁2」に直結します。
手順の詳細:アカウント取得から審査申請まで
1. アプリの入手と個人アカウント登録
アプリストアから「大众点评」アプリを入手し、電話番号またはWeChat(微信=中国で広く使われるメッセージアプリ)連携で認証コードを取得します。ショートメールで届いたコードを入力すればアカウントが作られます。
2. 実名認証(日本人はパスポートを使用)
ここが最初の関門です。中国の監督官庁の要件により、実名認証を完了しないとアカウントからログアウトされる仕様になっています。認証画面は中国の身分証番号を前提としているため、日本の飲食店の方は「无法认证?试试人工认证(認証できない場合は人による認証を試す、の意)」を選び、証明書の種類で「外国护照(外国パスポート、の意)」を指定してパスポート画像をアップロードします。
3. 店舗の追加申請
マイページ(我的)から「我的店舗(私の店舗、の意)」に進み、「去添加店舗(店舗を追加する、の意)」を選択します。必須入力は店舗名・店舗分類・店舗位置(住所)で、看板・入口などの写真もあわせて登録できます(最大9枚。出典: 中国人観光マーケティングLAB「中国最大級口コミサイト『大众点评』の徹底活用ガイド」(2025年2月21日))。
4. 書類の提出と審査
最後に営業許可証(営業執照)と身分証明書(パスポート)の画像をアップロードし、「提交审核(審査に提出、の意)」で申請完了です。審査結果が出るまでは通常3日〜1週間ほどとされています(出典: 中国人観光マーケティングLAB)。
壁1:入力も管理画面も、すべて中国語(簡体字)
手順そのものは、書き出してしまえば複雑ではありません。それでも自力登録が進まない理由の一つ目が言語です。
アプリの画面、入力フォーム、審査の通知——すべて中国語(簡体字)で完結します。日本語表示に切り替える設定はありません。前掲の解説記事でも、入力は中国語表記が基本で、翻訳ツールを併用しながら進める必要があると説明されています(出典: 中国人観光マーケティングLAB)。
注意したいのは、台湾・香港向けに作った繁体字のメニューをそのまま流用できるとは限らない点です。中国本土は簡体字、台湾・香港は繁体字で文字体系が異なります。とりわけ店舗分類(店铺分类)の選択は審査と検索での見つかりやすさに影響し、マニュアルでも「分类错误会影响审核结果(分類を誤ると審査結果に影響する、の意)」と注意が促されています。翻訳ツールで単語を置き換えるだけでは判断しきれない部分です。
壁2:無料登録のままでは、店舗側が情報を編集できない
2つ目の壁が、実務上いちばん重い問題です。
手順のステップ2で触れたとおり、無料版の登録は「一般利用者として施設の登録を依頼する」形をとります。その結果として掲載は始まりますが、オーナー本人が自由に編集・修正できる状態にはなりません(出典: 中国人観光マーケティングLAB)。店舗側が情報の追加・修正を行えるようになるのは、公式認証店舗の登録サービスに申し込んだ場合です(出典: JC Connect株式会社「大衆点評 よくあるご質問」)。公式認証店舗では、ページのカスタマイズや情報修正に加えてクーポンの発行、事前決済チケットの販売、口コミへの公式返信といった機能が使えます。
飲食店にとって見逃せないのが口コミへの公式返信です。中国のお客様は「店側が言っていること」より「実際に食べた人が書いたこと」を基準に店を選びます。低評価の口コミに事実誤認が含まれていても、返信手段を持たなければその内容が一方的に残り続けます。
なお、写真や口コミには一定の規定があり、店舗側で削除することはできません(出典: JC Connect株式会社)。都合の悪い口コミを消すという発想ではなく、誠実に返信して次の閲覧者に伝える前提で運用を設計する必要があります。
壁3:申請が通る保証がなく、登録後も運用が続く
日本の店舗は、そもそも登録できない場合がある
岩手県のマニュアルは、手順を丁寧に示したうえで末尾に注意を明記しています。大衆点評側の事情により、無料版では日本の店舗登録ができない可能性がある、登録のタイミングなどによって変わる、という趣旨の但し書きです(出典: 岩手県「大衆点評(無料版)登録マニュアル」)。公的機関の手順書にこの但し書きが付いている事実は重く、手順どおりに進めても申請が通らないことがある——担当者の作業ミスではなく仕組み側の制約だと理解しておく必要があります。
位置情報を地図上で設定できない
同マニュアルは、店舗位置の入力画面について「地図で位置情報を設定できるが、現時点で中国大陸以外は地図での操作ができない」とも記しています。日本の住所を正確に反映させるうえで無視できない制約です。
登録は出発点にすぎない
掲載されたとしても作業は終わりません。営業時間の変更を反映し、写真を増やし、中国語で届く口コミに向き合う——この継続運用を店内で回せるかどうかが成果を分けます。一度登録して放置すると、古い情報が「正しい情報」として中国のお客様に伝わり続けます。
まとめ:登録はゴールではなく、選ばれるための出発点
本記事の要点を整理します。
- 大衆点評への掲載には、無料版の自力登録と、公式認証店舗としての登録という2つのルートがある
- 自店のページは、利用者の投稿によってすでに作られている可能性がある。まず現状確認から
- 無料版の手順は、個人アカウント取得 → 一般利用者として登録を依頼 → 地点登録 → 店舗情報の入力という4ステップ
- 壁1=すべて簡体字。繁体字の流用は不可。店舗分類の誤りは審査に影響する
- 壁2=無料登録のままではオーナーが編集できず、口コミへの公式返信もできない
- 壁3=公的マニュアルにも「日本の店舗登録ができない可能性」の但し書きがある。登録後の継続運用も必要
訪日市場全体を見れば、2026年6月の訪日外客数は314万8,600人(前年同月比6.8%減)と足元では揺れています(出典: 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年6月推計値)」)。それでも店舗情報と口コミは消えずに残る蓄積型の資産です。需要が動いたときに「調べたら自店が出てくる」状態を先につくっておく意味は、そこにあります。
RED BOOSTは数十店舗の飲食店のインバウンド集客をお手伝いする中で、大衆点評の店舗登録代行と中国語での口コミ返信代行を行っています(大衆点評 登録代行・口コミ返信代行の詳細はこちら)。