福岡で店をやっていると、韓国語が聞こえてくる日はもう珍しくありません。ただ「だから韓国向けに何かをしている」という店は、思ったより少ないのが実情です。英語メニューを用意して、キャッシュレス決済を整えて、そこで止まっている店をよく見かけます。
福岡は、全国平均のつもりで見ていると読み違えます。日本全体では最も多い国の割合が2割台なのに対し、福岡市に入ってくる外国人は6割近くが韓国からです。この偏りは弱点ではなく、力を集中できるという意味で強みになります。
本記事では、福岡の外国人客の顔ぶれを公的統計から確認し、そこから逆算して「どこに情報を置けば見つけてもらえるのか」までをつなげます。数字はすべて観光庁・福岡市・日本政府観光局(JNTO)の公表資料から引いています。
福岡県は、訪日客のおよそ9人に1人が訪れる県です
まず全体の位置づけからです。観光庁のインバウンド消費動向調査によると、2025年に福岡県を訪れた訪日外国人は451.3万人でした。訪日客全体に占める訪問率は10.97%です(出典: 観光庁「インバウンド消費動向調査」2025年暦年 都道府県別集計表)。
これは東京都50.79%、大阪府41.32%、千葉県35.14%、京都府29.73%に次ぐ全国5位です。三大都市圏と京都を除けば、福岡が先頭に立ちます。北海道の7.32%や沖縄県の5.60%より上、と言えば規模感が伝わるでしょうか。
福岡市に限った数字も出ています。2024年の福岡市への外国人入国者数は390.0万人でした。コロナ前のピークだった2018年の309.4万人を超え、過去最大です(出典: 福岡市「福岡市の観光・MICE」2025年版)。
母数は十分にあります。あとは、その中で自分の店が見つかっているかどうかです。
福岡に来る外国人の6割近くは、韓国から来ています
ここが福岡の特徴です。福岡市の集計によると、2024年の外国人入国者の国・地域別の割合は次のとおりでした(船舶観光上陸許可=クルーズを除く。出典: 福岡市「福岡市の観光・MICE」2025年版)。
- 韓国……57.3%
- 台湾……13.3%
- 香港……9.7%
- 中国……6.4%
- タイ……2.9%
同じ資料には、日本全体の割合も並べてあります。全国では韓国23.9%、中国18.9%、台湾16.4%、香港7.3%、米国7.4%という構成です。福岡の韓国比率は、全国のおよそ2.4倍にあたります。
しかも偏りは強まっています。2019年の福岡市は韓国42.2%、台湾11.9%、中国8.3%、香港8.0%でした。5年で韓国は42.2%から57.3%へ伸び、中国は8.3%から6.4%へ下がっています。
韓国・台湾・香港の3つを足すと、福岡市の外国人入国者の80.3%になります。福岡の飲食店にとって、この3市場は一部の客層ではなく、外国人客のほぼ全体です。
2026年の動きは、福岡にとって追い風です
市場の顔ぶれは固定ではないので、直近の動きも見ておきます。JNTOの推計によると、2026年1〜7月の訪日外客数は24,527,200人で、前年同期比1.7%減でした(出典: JNTO「訪日外客数(2026年7月推計値)」)。全体は横ばいですが、市場別では動きが割れています。
- 韓国……6,569,800人(前年同期比20.3%増)
- 台湾……4,736,000人(同21.8%増)
- 香港……1,571,000人(同8.6%増)
- 中国……2,486,500人(同56.3%減)
同じ資料では、7月単月の韓国は894,700人で、7月として過去最高を記録しました。
ここで前の章の数字を思い出してください。福岡市の入国者は韓国・台湾・香港で8割を占め、中国は6.4%にとどまります。伸びている3市場の比重が大きく、落ち込んでいる市場の比重が小さい——これが今の福岡の立ち位置です。全国平均のニュースを見て身構える必要は、福岡に関しては薄いといえます。
韓国のお客様は、旅行前に「個人のブログ」を読んでいます
狙う市場が決まれば、次は「どこで見つけてもらうか」です。ここで手がかりになるのが、観光庁の2025年年次報告書です。出発前に役に立った旅行情報源を国籍別に集計しています(出典: 観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年 年次報告書」)。
韓国の旅行者の回答は次の順でした。
- 1位 SNS……47.1%
- 2位 動画サイト……43.8%
- 3位 個人のブログ……42.9%
全国籍・地域の平均では「個人のブログ」は23.9%です。韓国はその1.8倍にあたります。韓国の旅行者が맛집(マッチプ=うまい店)を探すとき、NAVERブログに並ぶ体験記事を読み込んでから行き先を決める習慣が、数字にも表れています。
同じ資料では、韓国の旅行者が「日本滞在中に役に立った旅行情報」の1位に飲食店(56.5%)を挙げています。食べる場所の情報を、旅の前も最中も探し続けている人たちだということです。飲食店にとってこれ以上ないほど相性の良い相手が、福岡には最も多く来ています。
情報を出している場所と、来ている人の国がずれています
もうひとつ、福岡の資料に興味深い数字があります。福岡市の観光情報サイトの、外国語ページの言語別構成比(2024年)です(出典: 福岡市「福岡市の観光・MICE」2025年版)。
- 繁体字……42%
- 英語……39%
- 韓国語……15%
- 簡体字……3%
入国者では57.3%を占める韓国が、公式サイトの閲覧では15%です。台湾・香港(繁体字圏)は入国者23.0%に対して閲覧42%ですから、比率がほぼ逆転しています。
これは福岡市のサイトの出来の話ではありません。韓国の旅行者は、行政や店の公式ページではなく、NAVERの検索結果に並ぶ個人の記事で情報を集めている——前の章の42.9%と重ねると、そう読むのが自然です。
店に置き換えると、こうなります。自社サイトを韓国語に翻訳しても、その入口に人が立っていなければ読まれません。読まれる場所は、韓国の人が普段開いている検索と、そこに並ぶ体験記事の側にあります。詳しくは韓国NAVERブロガーによる来店PRのページで整理しています。
福岡の飲食店は、この順番で進めると迷いません
ここまでを実務の順番に落とします。
- 韓国を主軸に置く……入国者の6割近くを占め、いま伸びている市場です。福岡では最初に手をつける市場がはっきりしています
- 韓国語の体験記事を積む……店からの告知より、実際に来店した人が書いた記事が読まれます
- 台湾・香港を第二の柱にする……合わせて2割強を占め、こちらも伸びています。繁体字のInstagram投稿が入口です
- 受け入れ整備を並行させる……韓国語メニューや決済は、来店が増えてからでは間に合いません
- 反応を見て寄せる……手応えのある市場に力を移していきます
順番が大事です。受け入れ整備だけを進めると、来た人の満足度は上がっても、来店数そのものは変わりません。露出だけを進めると、来店は増えても迎える体制が追いつきません。両輪で回すのが現実的です。
なお、中国本土向けの施策を福岡で最優先にする理由は、いまのところ薄いといえます。入国者の6.4%で、直近は全国的にも縮んでいる市場です。余力ができてから着手する順番で構いません。
まとめ——福岡は、狙う市場を迷わなくていい街です
福岡は訪日客の訪問率で全国5位、福岡市の外国人入国者は過去最大を更新しました。そのうえで、来ている人の顔ぶれは韓国に大きく偏っており、その韓国はいま伸びている市場です。
全国のインバウンド記事は「どの市場を狙うか」から書き始めます。福岡の飲食店は、そこで悩む必要が薄い。すでに答えが来店客の内訳に出ています。やることは、韓国の人が旅行前に読んでいる場所に、韓国語で読める体験記事を積むことです。
RED BOOSTは、韓国のNAVERブロガー、台湾・香港のInstagramクリエイターによる来店型PRを行っています。どこから手をつけるか迷っている段階でもご相談ください。