外国人のお客様を増やしたいと考えたとき、多くの店がまずGoogleマップの情報を整えます。これは正しい順番です。訪日客の大半が日本滞在中にGoogleマップを使っており、飲食店探しでも中心的な道具になっています。
ただし、Googleマップを整えるだけでは届かないお客様がいます。そもそもGoogleが使えない国があり、店を見つけてもらうきっかけは地図の外にあるからです。地図は、来ると決めた人を店まで運ぶ道具です。来ると決めてもらう入口は、国ごとに別に用意する必要があります。
本記事では、公開されている調査データをもとに、Googleマップ対策がよく効く場面と、そこから抜け落ちやすい三つの盲点を整理します。
前提として、Googleマップは訪日客の必需品です
株式会社Paykeが2025年6月、訪日客1,827人にアンケートを行いました。日本滞在中にGoogleマップを使ったと答えた人は99%です(出典: Payke「インバウンドの99%がGoogle Mapを利用」)。ナビゲーションアプリの利用状況でも「Google Mapしか使っていない」が65.90%で1位でした。
飲食店探しも同じです。同じ調査では、初めての店を見つける手段として、初訪問者・リピーターを問わずおよそ半数が地図アプリを挙げています。メニューや営業時間などの詳細を調べる場面では、67.10%が地図アプリを使っていました。
ですから、店の写真・営業時間・メニューをGoogleマップ上で整えることは、訪日客対策の土台になります。ここを飛ばして他の施策に進む理由はありません。
そのうえで一点。この調査の回答者は、韓国語・英語・繁体字中国語の話者です。この点はあとで効いてきます。
順位そのものも、地図の外にある情報で決まります
Googleは、ローカル検索結果の順位を決める要素として「関連性」「距離」「知名度」の三つを挙げています(出典: Google ビジネス プロフィール ヘルプ「ローカル検索結果で上位に表示されるようにする」)。
- 関連性……検索語句とビジネス プロフィールが合致する度合い
- 距離……検索しているユーザーから店までの距離
- 知名度……ビジネスがどれだけ広く知られているか
このうち店側が伸ばせるのは、主に関連性と知名度です。知名度について、Googleは、店を紹介するウェブサイトからのリンクの多さやクチコミの数といった情報にも基づくと説明しています。つまり、地図の外で自店がどれだけ語られているかが、地図の中での見つかりやすさに跳ね返ってきます。
同じヘルプには「Google では、ランキングを上げるためのリクエストや金銭の受け取りには一切応じておりません」とも書かれています。順位を買う近道はなく、店が語られている実態を積み上げるしかない、という前提で考えるのが安全です。
盲点① 「99%」の調査に、中国本土のお客様は入っていません
先ほどの99%という数字には、条件があります。この調査の対象は、韓国語話者(韓国)、英語話者(フィリピン・アメリカなど)、繁体字中国語話者(台湾・香港)でした。簡体字を使う中国本土の旅行者は含まれていません。
中国本土ではGoogleやInstagramが原則として利用できません。地図アプリの利用度ランキングでも、百度地図(Baidu Map、中国の地図アプリ)は0.38%で最下位でしたが、これは回答者に中国本土の方が含まれていないためでもあります。
中国本土のお客様に見つけてもらう場所も、確かめてもらう場所も、別のアプリの中にあります。
- RED(小紅書)……写真と短文で体験を共有する発見型のSNSです。2025年以降は「rednote」の名称も使われます
- 大衆点評(大众点评、ダージョンディエンピン)……店の評価と口コミを調べるアプリで、中国版の「食べログ+Googleマップ」にあたります
Googleマップをどれだけ磨いても、この二つの中に店の情報がなければ、中国本土のお客様の画面には出てきません。くわしくはREDのページと大衆点評のページで扱っています。
盲点② 韓国のお客様は、店を見つける場所と、向かう場所が違います
同じPaykeの調査で、韓国語話者は76.59%が「Google Mapしか使っていない」と答え、三つの言語圏で最も高い数字でした。日本国内での移動に関するかぎり、韓国のお客様はGoogleマップにほぼ一本化していることになります。
ところが、どこへ行くかを決める段階は違います。観光庁のインバウンド消費動向調査(2025年年次報告書)で韓国を見ると、出発前に役に立った情報源はSNSが47.1%、動画サイトが43.8%、個人のブログが42.9%でした(出典: 観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年年次報告書」)。個人のブログの割合は全国籍・地域の合計(23.9%)の2倍近くあり、韓国の際立った特徴です。
このブログの多くは、韓国最大級の検索・口コミ媒体であるNAVERの中にあります。韓国のお客様は、NAVERで地域名や料理名を検索して店を見つけ、日本に着いてからGoogleマップで向かう。そうした二段構えが見えてきます。
ですから、韓国のお客様に届けたい場合、Googleマップの整備は「来ると決めた人を迷わせない」ための備えです。決める段階に入るには、NAVERの中に読まれる記事があるかどうかが問われます(NAVERブログのページ)。
盲点③ 地図は、すでに探している人にしか届きません
Googleマップは、検索窓に語句を入れた人に対して答えを返す仕組みです。裏を返すと、その地域や料理を思いついていない人、日本のどの街に行くかも決めていない人には、地図の側から近づく手立てがありません。
観光庁の同じ調査で、出発前に役に立った情報源を全国籍・地域の合計で見ると、上位はSNS(43.3%)、動画サイト(39.6%)、個人のブログ(23.9%)でした。一方で口コミサイトは11.0%、日本政府観光局のホームページは12.2%です。
旅の行き先が固まるのは、SNSや動画、ブログを眺めている時間帯だということです。そして日本に着いたあと、滞在中に役に立った情報として2番目に多く挙がったのが「飲食店」(56.0%)でした。韓国にかぎれば飲食店が1位(56.5%)です。
旅の前に見つけてもらう。旅の途中で確かめてもらう。この二つは、別々の場所で果たされています。Googleマップは後半を担う道具で、前半は別に用意する必要があります。
Googleマップ側で、先にやっておきたいこと
土台としてのGoogleマップには、手をかける価値があります。特別な道具はいらず、店の方の手で進められます。
- 写真を増やす……料理の寄りだけでなく、外観・入口・店内・席の様子まで。初めての国で入口がわからない不安は、写真でかなり減らせます
- 営業時間を最新に保つ……定休日や臨時休業、年末年始などの特別営業時間を入れておきます。遠くから来た人ほど、閉まっていた経験は口コミに残ります
- メニューを登録する……何が食べられる店なのかが一目でわかる状態にします
- 口コミに返信する……外国語の口コミにも、短くて構わないので返します。読んでいる人がいるとわかること自体が判断材料になります
- 予約や問い合わせの導線を置く……予約ページのURLや電話番号が正しいかを確かめます
気をつけたいのは、口コミの集め方です。Googleは、クチコミの投稿や否定的なクチコミの修正・削除と引き換えに、金銭・割引・無料の商品やサービスといったインセンティブを提供する行為を禁止しています(出典: Google「マップ ユーザー投稿コンテンツのポリシー」)。身内が複数のアカウントから投稿する行為も、虚偽のエンゲージメントとして削除の対象です。急がず、来ていただいた方に自然にお願いするのが結局は近道です。
見つけてもらう入口は、国ごとに用意します
ここまでを整理します。Googleマップは、来ると決めた人を店まで運ぶ導線として、ほぼすべての国のお客様に効きます。一方で、来ると決めてもらう入口は国ごとに分かれています。
- 韓国……NAVERの記事で見つけ、Googleマップで向かいます(NAVERブログ)
- 台湾・香港……動画やInstagramの投稿で見つけ、Googleマップで向かいます(台湾・香港向けInstagram)
- 中国本土……REDで見つけ、大衆点評で確かめます。Googleマップは経路に入りません(RED/大衆点評)
そして、地図の外で語られることは、地図の中での知名度にも効きます。現地の言葉で書かれた記事や投稿が増えることは、入口を増やすと同時に、Googleマップでの見つかりやすさにもつながっていきます。
RED BOOSTでは、こうした国ごとの入口づくりを飲食店のみなさまと進めています。自店にどの国のお客様が来ているかがわかれば、次に手をつける入口も決めやすくなります。まずは直近の来店の内訳を見るところから始めてみてください。
この記事は、飲食店のインバウンド集客を支援する
RED BOOST が、公的統計や公式資料をもとにまとめたものです。数字は「参考・出典」のリンク先で確認できます。
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