台湾インバウンド対策

台湾人観光客の集客方法——Instagramを軸にした飲食店の対策

台湾は、日本の飲食店にとって最も近い外国市場のひとつです。2025年に台湾から日本を訪れた人は6,484,286人(前年比12.3%増)にのぼります。旅行消費額でも、国籍・地域別で中国に次ぐ2番目の規模でした(出典: 観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年 年次報告書」)。

特徴は、その多くが日本に来たことのあるリピーターだということです。同じ調査で、台湾の旅行者のうち今回が初めての訪日だった人は12.1%にとどまります。すでに定番を回り終えた人たちが、次はどこで食べるかを探している——それが台湾市場です。本記事では、その人たちが出発前に何を見ているのかを公的データで確認したうえで、飲食店がInstagramをどう整えればよいかを整理します。

数字で見る台湾のお客様——「もう来たことがある人」が大半

まず、台湾のお客様がどういう旅をしているのかを押さえます。以下はすべて観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年 年次報告書」によります(出典: 観光庁「訪日外国人の消費動向」(PDF))。

  • 2025年の台湾からの訪日旅行者数は6,484,286人(前年比12.3%増)
  • 旅行消費額は国籍・地域別で中国に次ぐ2位
  • 来訪回数は「2〜5回目」が44.8%で最多、「1回目」は12.1%。10回目以上も26.4%を占める
  • 旅行形態は個別手配が77.5%。団体ツアーは17.8%
  • 一般客の平均泊数は6.5泊、来訪目的は「観光・レジャー」が92.5%

リピーターと個人手配が意味すること

日本政府観光局(JNTO)も台湾を「訪日経験率が特に高い成熟市場」と位置づけ、訪日4回以上のヘビーリピーター比率が増加傾向にあるとしています(出典: JNTO「台湾市場マーケティング戦略」)。

この2つの数字は、飲食店にとって同じ方向を指しています。旅程を旅行会社が組むのではなく、本人が調べて決めているということです。8割近くが個別手配で、6泊前後を過ごし、その大半が観光目的。店が選ばれるかどうかは、本人が調べる時間の中で決まります

出発前に見られているのは動画とSNS——口コミサイトは上位に出てこない

では、その「調べる時間」に何が見られているのか。同調査の「旅行出発前に役に立った旅行情報源」で、台湾の回答は次の順でした。

  1. 動画サイト(YouTube/愛奇芸等)……45.5%
  2. SNS(Facebook/X/微信等)……42.7%
  3. 個人のブログ……29.0%
  4. 自国の親族・知人……17.7%
  5. 日本政府観光局ホームページ……17.1%
  6. 旅行会社ホームページ……16.1%

7位以下は宿泊施設ホームページ(11.2%)、テレビ番組(10.8%)、日本在住の親族・知人(10.0%)、宿泊予約サイト(9.4%)と続きます。ここで注目したいのは、口コミサイトが上位10項目に入っていないことです。10位が9.4%ですから、それを下回ります。

他人の体験談が、上位を占めている

1位から3位までを並べ直すと、性質が見えてきます。動画サイト・SNS・個人のブログは、いずれも実際に行った人が自分の体験として発信したものです。店が自ら発信した公式情報や、評価点を集計したサイトではありません。

一方、日本滞在中に役に立った情報では「飲食店」が48.3%で2位に入っています(1位は交通手段66.3%)。出発前に候補を仕入れ、滞在中に飲食店の情報を確かめる——この流れが数字に表れています。出発前の段階で候補に入っていない店は、滞在中に調べてもらう対象にもなりません。

SNSのなかでInstagramを軸にする理由

調査の選択肢は「SNS」とまとめられているため、この数字だけでInstagramの比率はわかりません。ただ、台湾向けの実務でInstagramが軸になる理由はあります。

公的機関の発信先にもなっている

JNTOは台湾市場向けの情報提供先として、ウェブサイトに加えてFacebook・Instagram・YouTubeを挙げています。香港市場も同じ3媒体です(出典: JNTO「ウェブサイトやSNSを通じた訪日観光情報の提供」)。中国本土向けが微博・WeChat・RED(小紅書)であるのとは対照的で、台湾・香港は日本と同じ媒体が使える市場だとわかります。

店の情報と相性がよい

Instagramは写真と短い動画が主役で、位置情報を付けて投稿できます。料理の見た目、店の雰囲気、場所——飲食店が伝えたい要素とかたちが合っています。台湾と香港はどちらも繁体字圏なので、繁体字で用意した情報は両方の市場でそのまま使えます。中国本土向けの簡体字とは書き分けが必要ですが、繁体字圏はまとめて対応できるぶん、手間が二重になりません。

フィード・ストーリーズ・リールの役割分担

Instagramには投稿の形式がいくつかあり、それぞれ働き方が違います。全部を同じ熱量でやろうとすると続かないので、役割を決めておくのが現実的です。

フィード投稿=店の顔として残す

プロフィールを開いた人が最初に見る場所です。ここは流れていく情報ではなく、店の紹介として残るものと考えてください。看板メニュー、外観、店内の様子を並べておくと、初めて見た人が「どんな店か」を数秒で判断できます。

ストーリーズ=今日の状況を伝える

24時間で消える形式です。本日の仕入れ、空席、臨時休業など、鮮度が命の情報に向いています。消えることが前提なので、完成度より頻度が優先です。

リール=知らない人に届ける

短い動画で、フォロワー以外にも表示されます。まだ店を知らない人と出会える入口がここです。調査で動画サイトが1位だったことを踏まえると、動く映像で見せる意味は小さくありません。カウンター越しの手さばき、鉄板の音、盛り付けの瞬間——静止画では伝わらない部分が向いています。

プロフィール=迷わせない

意外に見落とされるのが、プロフィール欄と地図上の位置です。営業時間、予約の可否、最寄り駅からの行き方。ここが曖昧だと、興味を持った人が最後の一歩で離れます

自店の発信だけでは足りない理由

ここまで自店アカウントの話をしてきましたが、前掲の調査結果をもう一度見てください。上位を占めていたのは、店ではなく個人が発信した体験談でした。

店が自分で「おいしい」と言うのと、旅行者が「ここで食べた」と書くのとでは、読む側の受け取り方が違います。しかも自店アカウントは、フォロワーがゼロの状態では誰にも届きません。台湾の人が旅行の計画を立てている時間に、店のアカウントは基本的に視界の外にあります。

現地のクリエイターに来てもらう「来店型PR」

そこで使われるのが、台湾・香港のクリエイターに実際に来店してもらい、体験として紹介してもらう方法です。書き手がすでに現地の読者を持っているため、店側が繁体字を書けなくても、投稿は現地の言葉と感覚で残ります。日本在住の外国人インフルエンサーに依頼する場合と比べ、読者の多くが現地にいる点が違います。

広告であることは隠さない

依頼して投稿してもらう場合、法令上の注意点があります。いわゆるステルスマーケティング規制で、景品表示法の指定告示として令和5年10月1日に施行されました。対象は「広告であって、一般消費者が広告であることを分からないもの」です(出典: 消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります」)。

規制を受けるのは、依頼した事業者の側です。投稿するインフルエンサーではありません。店側から「PR表記は付けないでほしい」と求めるのは、自店を危うくする依頼になります。

投稿してもらえる店にするために、今日から整えられること

繁体字の表記を決めておく

店名、住所、看板メニューの繁体字表記を決めておくと、投稿する人が書きやすくなります。表記がばらつくと、検索したときに情報が集まりません。台湾・香港は繁体字、中国本土は簡体字です。同じ中国語だからと流用すると、現地の人には見慣れない表記が混ざります。

外観と入口の写真を用意する

料理の写真は誰でも撮りますが、抜けやすいのが外観・入口・ビルのエントランスです。路地裏や雑居ビルの上階にある店ほど、たどり着けずに諦められます。地図だけでは足りない部分を写真が補います。

予約と席の条件を先に出す

カウンターのみ、コースのみ、時間制など、旅行者にとって行けるかどうかを左右する条件があります。先に伝えておけば、条件の合わないお客様を落胆させずに済みます。到着してから説明する形にすると、その戸惑いがそのまま投稿に書かれます。

投稿してもらえる状態をつくる

撮影可否をはっきりさせておく、席から料理が撮りやすい明るさにする、といった小さな整備も効きます。禁止する場合も、理由とともに先に伝えておけば角が立ちません

まとめ:台湾のお客様は「調べる時間」に決めている

本記事の要点を整理します。

  • 2025年の台湾からの訪日旅行者数は6,484,286人(前年比12.3%増)、旅行消費額は国籍・地域別で2位
  • 初めての訪日は12.1%だけで、大半がリピーター。個別手配が77.5%を占める
  • 出発前に役に立った情報源は動画サイト45.5%、SNS42.7%、個人のブログ29.0%の順。口コミサイトは上位10項目に入っていない
  • 上位を占めるのは、店ではなく個人が発信した体験談
  • JNTOも台湾・香港向けにFacebook・Instagram・YouTubeで発信しており、繁体字圏はまとめて対応できる
  • 依頼した投稿は、広告だとわかる形で出す(ステルスマーケティング規制)

台湾のお客様が次の旅先を考えている時間は、店の営業時間の外にあります。その時間に働いてくれるのは、すでに投稿された誰かの体験です。自店の発信で受け皿を整え、第三者の投稿が積み上がる状態をつくる——順番としてはこの2つです。

RED BOOSTは数十店舗の飲食店のインバウンド集客をお手伝いしています。台湾・香港市場では、現地クリエイターの来店型PRを行っています(台湾・香港インフルエンサー来店PRの詳細はこちら)。

参考・出典
FAQ

よくあるご質問

台湾向けの発信は、日本語のアカウントとは別に作るべきですか?

必ずしも分ける必要はありません。1つのアカウントで、キャプションに日本語と繁体字を併記する運用でも成立します。分ける場合は投稿の手間が二倍になるため、続けられるかどうかで判断してください。大切なのは言語の切り分けよりも、店名・住所・看板メニューの繁体字表記を決めておくことです。表記が定まっていれば、来店した人が投稿するときにも同じ言葉が使われ、検索したときに情報が集まりやすくなります。

台湾と香港は、同じ内容で対応してよいのでしょうか?

文字については、どちらも繁体字圏なので共通で使えます。使われているSNSも近く、JNTOは台湾市場・香港市場のいずれにもFacebook・Instagram・YouTubeで情報を提供しています。ただし旅行の傾向は同じではありません。滞在日数や訪問先の好み、休暇の時期には差があります。まず繁体字の情報を共通の土台として整え、投稿の切り口や時期の調整で違いに対応するのが現実的です。中国本土は簡体字で、使われる媒体も異なるため別に考えてください。

フォロワーが少ないうちからInstagramをやる意味はありますか?

あります。ただし期待の置きどころを変えてください。フォロワーが少ない段階では、投稿が新しい人に届くことは多くありません。この時期のアカウントは、他の場所で店を知った人が確認しに来る「受け皿」として働きます。実際、旅行者は投稿を見たあとに営業時間や場所を確かめます。そこで情報が古かったり、料理の写真が数枚しかなかったりすると、そこで検討が止まります。まずプロフィールと基本情報を整えることが先で、フォロワー数はその後の話です。

口コミサイトの対策はしなくてよいということですか?

そうではありません。観光庁の調査で口コミサイトが上位に出てこないのは「出発前に役に立った情報源」としての結果です。行き先の候補を探す段階ではSNSや動画が使われる、という意味であって、口コミサイトが不要という意味ではありません。台湾の旅行者は日本滞在中に役立った情報として「飲食店」を48.3%で2番目に挙げており、来店を決める直前には評価や営業時間が確かめられます。見つけてもらう入口と、確かめてもらう場所は役割が違うとお考えください。

クリエイターに来店してもらう場合、日本在住の人に頼むのとどう違いますか?

読者がどこにいるかが違います。日本在住の外国人インフルエンサーは、日本での生活情報を求める読者を多く抱えている場合があります。一方、台湾・香港の現地クリエイターの読者は、その多くが現地で暮らし、これから旅行先を検討する人たちです。出発前の段階で候補に入れてもらうことが目的であれば、現地の読者を持つ書き手のほうが目的に沿います。どちらが優れているという話ではなく、届けたい相手がどこにいるかで選んでください。

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