韓国からの集客について調べていると、「パワーブロガーに依頼する」という言い回しに何度も出会います。ところが、NAVERの公式なパワーブロガー選定は2016年に終了しています。今この肩書きを公式に名乗れる人はいません。
代わりに動いているのが、2020年2月13日に正式公開された인플루언서 검색(インフルエンサー検索)です。ビューティと旅行のベータ運用から、リビング・フード・ゲームなど計10分野へ広げて始まりました(出典: EBN「NAVER、인플루언서 검색(インフルエンサー検索)を正式オープン」)。
肩書きの話に見えて、飲食店にとっては依頼相手の選び方そのものが変わったという話です。何がどう変わったのか、順に見ていきます。
「パワーブロガー」は、もう公式の肩書きではありません
パワーブロガーは、かつてNAVERが分野ごとに選び、認定バッジを与えていた制度です。選ばれた書き手には読者と依頼が集まり、韓国のブログ文化を象徴する言葉になりました。その選定が2016年に終わり、以後は新たに認定される人がいなくなりました。
背景には、認定された書き手に依頼が集中し、対価や商品提供を前提としたやり取りが問題視された経緯があります。肩書きが読者の信頼から切り離されて一人歩きした——制度としてはそこで区切りがついた形です。
言葉だけが今も出回っています
日本語で書かれた解説の中には、この肩書きを現役の制度として説明しているものが残っています。読んだ側は「まずパワーブロガーを探そう」と考えますが、探しても公式には存在しません。
実務上の困りごとは、その先にあります。肩書きで探すと、自称や第三者が付けた呼び名を手がかりにするしかありません。判断材料が公式のものでなくなるぶん、依頼先の見極めが難しくなります。
今あるのは「NAVERインフルエンサー」という仕組み
現在NAVERが運営しているのは、書き手を表彰する制度ではなく、書き手が検索結果に参加するための仕組みです。公式のインフルエンサーセンターでは、大きく3つの柱が案内されています(出典: NAVER인플루언서 센터(NAVERインフルエンサーセンター)公式サイト)。
- 인플루언서 홈(インフルエンサーホーム)……自分の関心分野を表現する専用ページ
- 검색 참여(検索参加)……検索結果に自分のコンテンツを出すための機能
- 広告収益……ホームに広告を掲載して収益を得る仕組み
このほか、メンタリングや無料講座といった育成プログラムも用意されています。認定して終わりではなく、続けて書く人を支える設計になっている点が、旧制度との大きな違いです。
「ファン」という関係が土台にあります
読者は、気に入った書き手を팬(ファン)として登録できます。そして自分がファン登録した書き手のコンテンツは、検索結果で上位に表示されます(同センター)。
一度読んで良かった書き手の記事が、次の検索でも目に入る。この積み重ねが、韓国の読者にとっての「信頼できる情報源」を作っています。フォロワー数が大きいかどうかとは、別の軸の話です。
キーワードチャレンジ——検索結果に出る条件が変わりました
飲食店にとって最も関係が深いのが、키워드 챌린지(キーワードチャレンジ)と呼ばれる機能です。公式サイトの説明はこうです。望む検索語に自分のコンテンツを直接登録すると、専門性やコンテンツの適合性などをもとに検索結果へ表示される(出典: NAVERインフルエンサーセンター「검색 참여(検索参加)」)。
さらに、インフルエンサー専用の検索タブが用意されています。同じ公式ページによると、このタブでは次のように表示されます。
- キーワードチャレンジに参加した書き手が、まとめて先に表示される
- 書き手の詳細プロフィールが並び、その場でファン登録できる
- 読者がファン登録済みの書き手のカードは、上位に置かれる
- 마이타입(マイタイプ)という絞り込みで、分野・性別・年代などから書き手を探せる
店名ではなく、探されている言葉で出るかどうか
この仕組みが意味するのは、記事が「探されている言葉」の検索結果に置かれるかどうかが勝負になったということです。正式公開を伝えた前掲の報道によると、検索結果への表示にはファン数や閲覧数に加え、コンテンツの新しさや更新の周期なども総合的に反映されます。
店の側から見ると、確認すべきことは1つに絞れます。依頼を検討している書き手が、自店の狙う言葉——たとえば地名と業態の組み合わせ——で実際に表示されているか。肩書きの有無より、この結果のほうが確かです。
なぜ韓国だけ、ブログがこれほど読まれるのか
ここで、韓国の旅行者が何を見て店を決めているのかを確かめます。まず全体(全国籍・地域)の傾向です。観光庁の調査では、出発前に役に立った旅行情報源の上位はSNS43.3%、動画サイト39.6%、個人のブログ23.9%でした。口コミサイトは11.0%です(出典: 観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年 年次報告書」(PDF))。
韓国だけを取り出すと、並びが変わります。
- SNS……47.1%
- 動画サイト……43.8%
- 個人のブログ……42.9%
全体では23.9%の項目が、韓国では42.9%です。およそ倍の水準で、上位3つがほぼ横並びになっています。旅行者がNAVERで検索し、誰かの記事を読んでから店を決める習慣が、そのまま数字に出ています。
来日してからも、飲食店が調べられています
同じ調査で、日本滞在中に役に立った旅行情報を見ると、韓国では飲食店が56.5%で1位でした。交通手段(52.2%)を上回っています。全体では飲食店56.0%が交通手段65.9%に次ぐ2位ですから、韓国だけ順位が入れ替わっている形です。
出発前に候補を決め、滞在中にもう一度確かめる。そのどちらの場面でも、読まれているのは韓国語で書かれた記事です。
市場としての大きさも確かめておきます
2025年に日本を訪れた外国人は42,683,600人で、前年比15.8%増の過去最高でした(出典: JNTO「訪日外客数(2025年12月推計値)」)。国籍・地域別に見ると、韓国は9,420,144人で最も多い市場です(前掲の観光庁報告書。クルーズ客を除く数値)。2026年も上半期の累計が21,084,800人で、6月として過去最高を記録した15市場に韓国が入っています(出典: JNTO「訪日外客数(2026年6月推計値)」)。
旅行支出に占める飲食費の構成比も、韓国は27.3%で全体の22.0%を上回ります(前掲の観光庁報告書)。人数が最も多く、食事への配分も高い市場——そこで読まれているのがブログだということです。
依頼相手を見極める、4つの確認ポイント
肩書きが使えなくなった以上、店側は別の物差しを持つ必要があります。難しい調査は要りません。次の4点を順に見てください。
1. インフルエンサーとして認証されているか
認証を受けた書き手には専用のホームがあり、プロフィールから分野が確認できます。ブログだけを運営している書き手と、認証を受けている書き手では、検索結果での扱いが変わります。
2. 分野が自店と合っているか
フード分野で書き続けている人と、旅行全般を扱う人では、読者層が違います。読者数の大きさより、その読者が日本の飲食店に関心を持っているかどうかが重要です。マイタイプの分類は、この見極めの手がかりになります。
3. 狙う言葉で、実際に検索結果に出ているか
これが最も確実な確認方法です。自店が狙う言葉をNAVERで検索し、候補の書き手が表示されるかどうかを見ます。実際の検索画面は、どんな自己申告よりも正直です。
4. 更新が続いているか
前述のとおり、検索結果にはコンテンツの新しさや更新の周期も反映されます。過去に大きな読者を集めていても、更新が止まっている書き手の記事は、今の検索結果では見つかりにくくなります。直近の投稿日を見るだけで判断できます。
なお、ファン数などの数値は本人に確認するのが確実です。外から推定した数字を前提に条件を決めると、後で食い違いが起きます。
依頼するときは、日韓どちらのルールも関わります
来店を依頼して記事を書いてもらう場合、対価や商品提供があったことを読者に分かる形で示す必要があります。これは日本と韓国の両方で定められています。
日本側——ステルスマーケティング規制
景品表示法の指定告示として、令和5年10月1日に施行されました。対象は広告であるにもかかわらず広告だと分からない表示で、SNS投稿やレビュー投稿も含まれます。規制を受けるのは商品・サービスを供給する事業者(広告主)であり、依頼を受けた第三者は対象になりません(出典: 消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります」)。
韓国側——経済的利害関係の表示
韓国では公正取引委員会が「추천·보증 등에 관한 표시·광고 심사지침(日本語訳:推薦・保証等に関する表示・広告の審査指針)」を改正し、2020年9月1日から施行しています。広告主と推薦・保証を行う人の間に経済的な利害関係がある場合の公開方法を、媒体ごとに示したものです(出典: 大韓民国政策ブリーフィング「추천·보증 등에 관한 표시·광고 심사지침 개정」(公正取引委員会報道資料))。
つまり、書き手に表記を外すよう求めるのは、日韓どちらの側から見ても筋の通らない依頼です。表記があっても読者が離れるわけではありません。韓国の読者は、この表記のある記事を日常的に読み慣れています。
まとめ:肩書きではなく、検索結果で確かめる
本記事の要点です。
- NAVERの公式なパワーブロガー選定は2016年に終了。今この肩書きを公式に名乗れる人はいない
- 現在はインフルエンサー検索が動いている。2020年2月13日に10分野で正式公開された
- キーワードチャレンジで検索語に自分のコンテンツを登録し、専門性や適合性をもとに表示される
- 読者がファン登録した書き手のコンテンツは、その読者の検索結果で上位に出る
- 韓国では出発前の情報源として個人のブログが42.9%。全体の23.9%のおよそ倍
- 滞在中に役立った情報でも、韓国は飲食店が56.5%で1位
- 訪日客数は韓国が9,420,144人で最多。飲食費の構成比も27.3%と全体の22.0%を上回る
- 依頼時の表記義務は日韓どちらにもあり、日本では規制を受けるのは店側
探し方は一言で言えます。肩書きで探すのをやめて、検索結果で確かめる。これだけです。自店が狙う言葉をNAVERに入れて、そこに出てくる書き手を見る。分野が合っていて、更新が続いているか。判断材料はその画面の中にそろっています。
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